
TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > リビングのソファと一輪の水仙の花
その日は、朝からずっと、ソファに座ってテレビを見ていました。
別に見たい番組があった訳でもなく、ただ何となく、ボーっとしていたのです。
しかし、さすがに午後になると、少し身体を動かしてみよう…と思うようになりました。
私は、長靴をはいて、外へ出てみました。
家の前には、まだ雪が残っています。
テラスから、ママさんダンプを取り出してきて、何度か雪を、近くの川まで運びました。
高い場所から、雪を落とすのは、とても気持ちの良いものです。
川の流れの中で、少しずつ小さくなっていく雪塊を見ていると、何だか嬉しくなってきました。
私は、ママさんダンプを仕舞い込んで、小さなシャベルを取り出してきました。
駐車場の脇にある、花壇の雪を除けようと思ったのです。
少しづつ、少しずつ、シャベルに雪をすくい、川まで運びました。
それを何度か繰り返しながら、ふと、雪の中の花壇を眺めました。
すると、そこに、水仙の花が一輪、咲いているのです。
あれだけたくさんあった雪の下でも、水仙の花は、咲き続けていたのです。
花びらを大きく広げ、濃い緑の茎を、しっかりと立てています。
私は、またまた、何だか嬉しくなってきました。
その水仙の花の周りの雪を、きれいに除けて、私は家の中に戻ろうとしました。
すると、ちょうど母が、玄関から出てきたところでした。
母に、水仙のことを話すと、母も驚いて、花壇を見にきました。
愛らしい水仙の花を、ふたりで見ていると、どこからか、ひと吹きの風が流れました。
しかし、その風は、これまでの風とは、どこかが違っていました。
体に突き刺さるような、あの寒さは、もう感じませんでした。
私は裏庭に回り、リビングを見ました。
父が、ソファにもたれて、テレビを見ています。
トントンとガラス戸をたたくと、父が、何事だ?…といわんばかりに、外に出てきました。
父にも水仙のことを話して、一緒に花壇まで歩きました。
「ほおっ」という、父の驚きの声と顔に、私と母は、顔を見合わせました。
どこからか、そっと、春が近づいてきているような気配がしました。