14段階のリクライニング座椅子の不思議

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ソファに囲まれる生活

14段階のリクライニング座椅子の不思議

私が先日購入した、14段階にリクライニングできる座椅子は最高です。
その日の体の疲れに合わせて、自由自在に椅子の形状を変更することができるのです。

脚の上げ具合、膝の角度、背もたれの傾斜、そして首の向き。

その日どんな仕事をしたかによって、私はそれらの角度を全て微妙に調節して
その椅子に座ります。

あるときは、両脚を高くあげ、背もたれを少しだけ低く傾斜させて使用します。
またあるときは、膝を90度に曲げて、背もたれは直角にします。

そしてまたあるときには、ほぼ一直線のままの座椅子の上に体を横たえて、ほんの少しだけ
首を反らせます。

そういうふうに座り方を変化させることによって、体が受けたダメージのほとんどを
解消することができるのです。

ある日のこと。
今日の疲れは昨日と同じだと思って、私は昨日のままの角度の座椅子に体を落としました。

すると、何かが、おかしいのです。
どこかが、少し、昨日と違っているのです。

でも、この座椅子を使うのは、私ひとりだけのはずです。
そう思いながら、ふと顔を上げると、父と母がこちらを見ています。

私と目が合うと、2人とも慌てて視線を反らせました。
具合悪そうに、あちこちを眺めて、妙にそわそわしています。

その日わたしは、わざと座椅子をまっすぐに伸ばしたまま、リビングを出ました。
そして、つぎの日の夜。

お風呂から上がった私がリビングに行くと、私の座椅子は、昨日と同じで、まっすぐに
伸びていました。

それは明らかに誰も触ってはいないというように、昨日のままの形状でした。

私は座椅子に腰を下ろし、脚や膝や腰や頭のリクライニングを、自分だけにしか分からない
ような微妙な角度に調節しました。

そしてしばらくのあいだ、座椅子に体を横たえた後、リビングを出ました。
そして、そのまた次の日の夜。

私がリビングに入っていくと、父と母が突然ソファから立ち上がりました。
母は急いでキッチンからケーキを運んできて、父はトレイの上に紅茶を乗せています。

「今日開店したばかりの新しいお店で買ってきたの」
母がテーブルの上にケーキを置き、父はその横に紅茶を添えました。

私は、14段階にリクライニングされた座椅子に腰を下ろしました。
昨日とは少し違った傾きの背もたれにもたれながら、美味しいケーキと紅茶を食しました。

2011年12月28日 / タグ:[ , , ]