TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > ひとりカラオケのピンクのソファ
仲良し5人組で、カラオケに行くことになりました。
美咲から声が掛かり、皆で行くことになったのです。
それは本当に久しぶりのことで、私は随分と楽しみでした。
あと3日、あと2日、と、その日が来るのが待ち遠しくて仕方ありませんでした。
そうして、ついに、その日がやってきました。
歌い放題、飲み放題のセットで、お酒も入り、美咲、亜由美、結衣、真子の4人も
大はしゃぎでした。
食べて、飲んで、そして歌い始めると、4人はそれまで以上に積極的になりました。
5人の中では、私だけが引っ込み思案で、鈍くさくてスローぺでした。
最初に美咲が歌い、そのあと亜由美が続きました。
結衣が予約を入れると、争うように真子も歌い始めました。
そんな4人のパワーに圧倒されて、私はひとり拍手をしていました。
唄いたい歌は山ほどあったのに、とうとう1曲も歌うことができませんでした。
カラオケからの帰り道、私は誰とも喋りませんでした。
あれほど楽しみにしていたのに、1曲も歌わなかった自分がイヤになってしまいました。
家に着くと、ストレスだけが残っていました。
そしてそのストレスは、2日経ち、3日が過ぎても消えることはありませんでした。
私は、1人カラオケに行きました。
それまでの私なら、1人でカラオケに行くなど考えられないことでしたが、そのときの私には、
それほど大きなストレスが溜まっていたのです。
私は、まるで夢遊病者のように、カラオケルームに入りました。
あの悲しい日に歌えなかった曲の数々を、ただ歌い続けました。
そうして、最後の1曲を歌い終えたとき、自分が座っていたピンクのソファに気付きました。
その濃くて鮮やかなピンクのソファは、私の部屋にあるソファと同じでした。
引っ込み思案な自分の性格を変えようと、わざと派手な色のソファを選んだのです。
(今度は自分から皆を誘ってみよう……)あの日、歌えなかったストレスは解消できましたが、
ここに誰もいない寂しさは、どうにもできませんでした。