無人駅の3人掛けレザーソファ

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ソファに囲まれる生活

無人駅の3人掛けレザーソファ

冬の晴れ間…とでもいうような、とても良い天気でした。
日差しが眩しいほどに照りつけていて、空には雲ひとつありません。

1月という真冬に、こんな日は、そうそうあるものではりません。
まだまだ寒いことは寒いのですが、私は久々に外出してみました。

少し歩いてみると、木々も、草花も、生き生きとしています。
寒さに耐えながら、幹にも葉にも命が漲っています。

おひさまの力に感動しながら、誰もいない道路を、私は歩き続けました。
そうしているうちに、目の前に、JRの無人駅が見えました。

この駅は、町の西の端に位置しています。
殆ど隣町との境にあって、利用客もほんの少ししかいません。

それでも、朝夕は高校へ通学する学生がいるために、無人駅として存在しているのでした。
待合室はがらんとして、人ひとりいません。

でもコンクリートの床面には、空き缶も、ゴミもありません。
ゴミ箱にも、新しい袋が入っています。

棚の上の花瓶には、まだ新しい水仙の花が活けられていました。
そんな光景をぼんやりと眺めていた私は、「えっ」と、思わず小さな声を上げました。

それは、待合室の北側に置かれた、ソファでした。
3人掛けの、真新しいレザーソファでした。

色はベージュで、木目調の待合室の内装に、ぴったりでした。
1ヵ月ほど前、私が駅から列車に乗ったときには、このソファはありませんでした。

だからこのソファは、その後に、この待合室にやってきたのです。
私は、そっと、そのソファに腰をおろしました。

ふうわりと、私の体全体を包み込むように、ソファが受け入れてくれました。
「うん。いい、いい」独りごとのようにいって、私は両手を持ち上げます。

背伸びをすると、水仙の香りが、鼻先に流れてきました。
低い日差しが、窓ガラス越しに、待合室の中に注ぎ込んできます。

ぽかぽかと暖かくて、まるで春になった様な気がしました。
私は、そっと目を閉じました。

この待合室から、毎朝、高校へ通っていた頃のことが蘇ってきました。
あのころ座っていたのは、確か、木のベンチでした。

「もしもあの頃にもこんなソファがあったら…」
そう考えただけで、何だか楽しくなってくるのでした。

2012年1月24日 / タグ:[ , , ]