元日の朝ソファベッドで

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ソファに囲まれる生活

元日の朝ソファベッドで

大晦日の夕方から降り始めた雪が、辺り一面の景色を真っ白に塗り変えました。
家いえの屋根を、道路を、そしてわが家の庭の木々や草花までもを。

辺り一面が、きらきらと輝く純白でした。
私は少し遅いおせちを食べて、自分の部屋に戻ります。

母から手渡された年賀状を持って、ソファベッドに寝転びました。
テラスのガラス越しに、大きなぼたん雪が舞っています。

次から次へと舞い降りてきて、まるで異空間に迷い込んでしまったような錯覚に陥ります。
私は年賀状に目を落とし、一枚ずつ読んでいきました。

昔からのお馴染みさんと、新しく知り合った人と、そして……。
その年賀状の差出人の名前に、私は全く見覚えがありませんでした。

「白樺」というその珍しい名字の人物を思い出そうと、私はこの一年のあいだに出会った
人物の名前を、あれこれと思い出してみました。

そうそう、春に入社してきた彼の名前は、確か……。
いえいえ、彼の名字は「白石」……でした。

ときおり吹く風に、ぼたん雪がふうわりと舞い上がります。
風は同じ方向に吹いているはずなのに、ぼたん雪はそれぞれが違う方へ舞い上がります。

一面の白い世界の中に、椿の花だけが、まるで咲く時期を間違えたように赤く鮮やかに
色づいています。

(そういえば……夏の研修で一緒になった彼女)
私は机の引き出しから、そのときの研修名簿を取り出しました。

ふたたびソファベッドに寝転んで、ぱらぱらとページをめくります。
「おしい、樺島さんか……」

その人の名字も、また違っていました。
(ひょっとして、間違いじゃないの? 配達間違いってよくあるっていうから……)

もう一度、年賀状の宛名を確認してみました。
でも宛名は、間違いなく私の名前です。住所もこの家に間違いありません。

ただ、差出人の住所までもが、この家の住所になっているのでした。
(これこそ、書くときに、間違えたのかしら?)

その年賀状は、全ての文字が手書きでした。
まるで木筆のような味わいの字に、私は何気なく庭を眺めました。

ぼたん雪を枝いっぱいに乗せたの木が、じっと、私のほうを見つめています。
それは、この春に私が買い入れてきて植えた、白樺の木でした。

2012年1月1日 / タグ:[ , , ]