TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > ソファセットの真ん中にひとり
年末の大掃除をあらかた終えて、私はリビングのソファセットの真ん中に座りました。
わが家の家族は6人もいるというのに、12月30日のこの忙しいさなかに、
一体どこへ行ったというのでしょう。
誰もいないソファセットでひとり、私は「あ~あ」と、ため息をつきました。
夕べ私は、同僚と夜遅くまで飲んでいました。
仕事納めも終わったので、久しぶりに2人で居酒屋へ行ったのでした。
さすが大晦日前とあって、人の入りは少ないものでした。
忙しい師走の、しかも押し迫った30日に、飲み歩く人というのはなかなかいないのでしょう。
その居酒屋にいたのは、私と同僚の女性と、そして年輩の小父さんが1人だけでした。
私はその同僚ととても仲がよく、ことある度にその居酒屋へ行っていました。
だいたい月に一度、というペースでした。
だからお店の女将さんとは顔なじみで、そこへ来るお客さんたちのことも、
ほとんど知っていました。
しかしその小父さんとは初対面でした。
しばらくすると、その小父さんが私たちに話しかけてきました。
年が明けるとひとり娘が嫁に行くのだといって、嘆いてくるのです。
何の関係もない私たちでしたが、その叔父さんの話にとことん付き合ってあげました。
お酒の席というのは、そういうものなのです。
そのうちに時間ばかりが過ぎていき、帰宅するのが少し遅くなってしまいました。
家に帰るともう真っ暗で、みんな眠っていました。
……というわけで、今朝わたしが目覚めると、家中には誰もいなかったのです。
私は、自分の部屋の掃除を始めました。
窓ガラスを拭いて、床にワックスを掛けました。
テーブルもベッドも、みんなきれいに掃除をしました。
そしてお昼の12時になったのに、わが家の家族は誰ひとりとして帰ってこないのです。
ふとカレンダーを見ると、30日のところに、<お昼は外食>と書いてあります。
(そうだった! 今日は皆でレストランへ行くって……!)
もう手遅れでした。
私は力無く、ソファセットの真ん中にひとり、横になって目を閉じました。