１人掛け木肘レトロソファの不思議

私の部屋には、木肘付きのレトロソファがあります。
焦げ茶色の、１人掛けのソファです。

そのソファは、祖祖父が使っていたもので、とても年代物です。
それでも未だに破けた箇所もなく、ソファとしての役割を十分に果たしています。

そのレトロソファを使っていた祖祖父には、不思議な力があったのだと、私は
祖父から聞かされたことがあります。

それは今から１０年ほど前のことでした。
祖祖父はある宗教に入信していて、毎晩その教典を唱えていたそうです。

正座をして、その教典を長いあいだ唱えていると、祖祖父の体が少し、畳から
浮き上がるのだということでした。

その浮き上がり方は、教典が激しくなるに連れて、徐々に高くなっていきました。
祖祖父は、ばんばんと畳を跳ねるようにして、飛び上がったのだということです。

でも祖祖父が亡くなってから、祖父は、祖祖父ほどに、その宗教に熱心ではありませんでした。
だから自分には、祖祖父のような不思議な力はないと、そう思っていたそうです。

ところが、その不思議な力というのは、どうやら祖祖父が入信していた宗教のせいでは
なかったのです。

それは、わが家だけに代々伝わる能力だったのだと、祖父は私にいいました。
祖父が自分の不思議な力に気付いたは、７５歳のときだったそうです。

祖祖父のように体が浮き上がるのではなく、自分が強く念じたことが、実際にその通りに
なるのだと私に話してくれました。

そして、その能力を代々引き繋ぐ役割を果たしているのが、この木肘レトロソファだと
いうのです。

その話を聞いたとき、当然、私は半信半疑でした。
いくらそんな話を真面目にされても、すぐに信じる方がおかしいというものです。

その１０年後に、祖父が亡くなりました。
そして遺言に、そのソファを、孫である私が使うようにと書いてあったのです。

木肘レトロソファは、今、私の部屋に置いてあります。
まるで、それが当然と言わんばかりに、どっしりと存在しているのです。

そして私はというと、最近、周囲にいる人たちの考えていることが、まるで手に取るように
分かってしまうのです。

2012年1月5日 / タグ：[ ソファ, レトロ, 木肘 ]