ソファの思い出 アメリカ編5

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愛しのソファでリラックス

ソファの思い出 アメリカ編5

ソファの大きさは、時にその座り手の居心地や心持を大きくもさせ、
委縮もさせる物のように思います。
ただでさえ、恐縮するような相手を訪問し、その上、通された部屋が存外広く、
巨大でふかふかのソファに促された場合、とてつもなく委縮してしまうのではないでしょうか?
大企業の重役室などにある、ソファを思い浮かべてみてください。
正に、富と権力の象徴という感じがしませんか。時にソファを通して、人を威圧することが
このソファの目的なのではないかと勘ぐってしまいます。

私がアメリカである家庭を訪問した際は、その逆の役割をソファが果たしてくれました。
友人の叔母さんは、癌に身体を蝕まれており数度の入院と投薬を繰り返し、
抗がん剤の影響で頭髪も抜け、長時間起きている事が難しくなりつつある方でした。

その友人は、私を良き友として、大切に思ってくれている分、
出来る限りの自分の家族・親戚と私を対面させてくれ、
色々な人と話をする機会を作ってくれました。
私は癌の病状を聞いていたし、自分自身の母を癌で亡くしていたため、
ひどく緊張してその叔母さんと対面しました。

英語能力もつたない上に、人生経験もその叔母さんから見たら、
ひよっこ同然で、緊張の度合いは増すばかりでした。
けれども、その叔母さん宅の少し小さめのリビングに置かれているソファは、
私を拒むことなく受け止めてくれ、何故か後ろ盾を得たような心持にしてくれたのです。
2.5人掛けのソファと2人掛けのソファでコの字型に囲まれた空間で
叔母さんと向き合い、色々な話をしました。

仕事があるという友人は、私を放っておく形で出かけてしまったのですが、
それがかえって良い効果となり、
叔母さんが友人の親戚という顔ではなく、一人の人間として話をしてくれたように思います。

始めは緊張で口ごもっていたのですが、程よい広さと硬さのソファが、
まるで私をバックアップしてくれているようで、
案外と突っ込んだ話をすることができました。
病気についてや、死ぬということについて、年長の先輩としてアドバイスもくれました。
「腰を据えて話をする」という、正に腰を据えることのできたそのソファの効果が
大きかったのは言うまでもありません。

2012年2月23日 / タグ:[ , , ]