TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > 4つのソファを繋ぐリボンの結び目
私の家の10畳のリビングには、巨大なソファセットが置いてあります。
リビングのスペースの殆どを、そのソファセットが占領していて、他には何もありません。
テレビはもちろん、電化製品などひとつもないのです。
リビングの東側と南側の壁沿いに、3人掛けのソファがひとつずつ。
西側と北側の壁沿いには、2人掛けのソファが置いてあります。
ドアは北側にあり、東にも、南にも、西にも、大きな出窓がついています。
ドアのある北側の角をのぞいた3つの隅には、観葉植物が3鉢。
ソテツとアレカヤシとサンスベリヤが、リビングに緑を添えています。
そしてその4つのソファの真ん中に、ぽつり、と、小さなガラスの
テーブルがあるのです。
それはまるで、4つのソファを繋ぐ、リボンの結び目のようでした。
祖父母は2人とも大正の生まれで、もの静かな性格でした。
読書をこよなく愛していて、いつも南側のソファに腰を下ろしました。
暖かな日差しを背中に向けながら、大抵はうつらうつらしていました。
本当に本を読んでいるのかどうか、定かではありませんでしたが、
そんなことはどうでも良いことでした。
父母が座るのは東側のソファで、2人のあいだには、必ず美音が座りました。
美音は父母の孫であり、私の姪でした。
まだ2歳のオムツ娘で、だれかれかまわずに膝の上を移動し続けます。
そして姉夫妻は、西側のソファから、そんな美音の様子を注意深く見守ります。
私はというと、北側のドア近くに座りながら、今か今かと待ちわびているのです。
玄関のチャイムが鳴り響き、私は急いでリビングから走り出ます。
彼にスリッパを出すと、リビングの場所を説明して、キッチンへと急ぎます。
準備してあったコーヒーと紅茶をトレイに乗せて、リビングへ戻りました。
両親と姉夫婦が、何やら彼と話をしています。
祖父母は本を膝に置いて、その話に聞き耳を立てています。
ガラステーブルの上に、コーヒーと紅茶を置き、私は北側のソファの彼のとなりに座りました。
彼がちらりと私のほうを見たので、私は意味もなくうなづきました。