TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > 私と彼のフロアタイプクッション
私はドーナツが大好きです。…で、フロアタイプクッションが大好きです。
もっちもちで、癒し系の、そのフロアタイプクッション。
それはドーナツでいえば、米粉ドーナツです。
一度味わったら、忘れられない、もっちもち感。
ウレタンチップが、優しく包み込むように体全体にフィットして、まるで宙に浮いて
いるようです。
そして、8色カラーの選べる楽しさは、ドーナツでいえば、チョコレート味。オレンジ味。
レモン味。抹茶味。ピーチ味。黒ごま味。アップル味。イチゴ味。マスカット味です。
私と彼は、偶然、そのデパートの、家具コーナーで出会いました。
私は、以前からずっと欲しくて仕方のなかった、1人掛けタイプを探していました。
1人掛けタイプの大きさは、幅105センチ×奥行き100センチ×高さ51センチです。
座ったり、寝転んだり、ああでもない…こうでもないと考えていると、すぐ隣にいる彼が
目に入りました。
彼も、フロアタイプクッションに、寝転んでいました。
フロアタイプクッションの8色カラーは、バニラホイップ、エッグイエロー、モモピンク
セサミブラック、サンレッド、シ―プグレイ、コーヒービーン、マリモカーキです。
私は妥当といえるカラーの、エッグイエローに座っていました。
それなのに、その彼が寝転んでいたのは、モモピンクでした。
いくら選ぶ自由があるといっても、大人の男性が、モモピンクのクッションに寝転んで
いるというのは、少し…いいえ、大いにヘンです。
私は、軽蔑の眼差しで、その男性を見ました。
すると、その男性と、目が合ってしまったのです。
一瞬、気まずい思いが、私と彼のあいだに流れました。
私は即座に目を逸らし、彼はじっと、私のほうを見続けていました。
その帰り道、私はドーナツ屋さんに、立ち寄りました。
レモン味のドーナツを、トレイに乗せて、レジに並びました。
すると何と、さっきの彼が、私の後ろに並んだのです。
トレイには、モモピンクの、ピーチ味のドーナツが乗っています。
私は再び彼を軽蔑のまなざしで見、彼もまた、私をじっと見つめてきました。
……それが、今の私の彼です。
休日は、彼がクッションを持参してきて、私の部屋でくつろぎます。
勿論、彼はモモピンクで、私はエッグイエローです。