TOP > ソファスタイル コラム > ソファーに囲まれる生活 > 3人掛けのホワイトモダンカウチソファの陰謀
私が高校生になったとき、母は、リビングのソファを買い換えました。
3人掛けのモダンカウチソファで、色はホワイトでした。
それまでにも、リビングには、ちゃんとソファがありました。
木肘付きの3人掛けで、真っ黒なレザー貼りのソファでした。
夕食が終わると、一番先に、父がそのソファに腰掛けます。
そして、その次にそのソファに座るのは、私でした。
母は、夕食の後かたづけを済ませてから、ようやく、そのソファに座ります。
父がソファの左端で、母は右端でした。
私はいつでも真ん中で、両親に挟まれていました。
しかし私が中学生になったとき、母は、父と私に、夕食の後片づけを、手伝って欲しいと
いいました。
そして、父が食器を拭く係で、私は父が拭き終わった食器を、棚の中に片付ける係でした。
夕食の後片付けが全部終わってから、父がソファに座ります。
それとほとんど同時に、私も座ります。
そして、お茶を入れた母が、すぐ後からソファに腰を下ろします。
父と私は、母がガラステーブルに置いた湯呑みを持って、お茶を飲みます。
それが、わが家の夕食後の団欒の形でした。
しかし母には、その頃から、理想とする団欒の形があったのです。
それが、シンプルモダンなホワイトのソファに座り、そして飲み物は、紅茶だったのです。
その理想を叶えるために、母は私に、食器洗いを細かに教えました。
それには、いずれ自分の為になるのだからという、最もそうな理由も付いていました。
そうして私が高校生になったとき、母は、そのホワイトのソファを購入したのです。
専門店を回り、いろんな紅茶も買い揃えました。
その頃には、夕食の食器を洗う係は、完全に私でした。
そして、その食器を拭いて棚に片付ける係りは、父になっていました。
母はというと、夕食が終わるとすぐに、優雅に紅茶を入れ始めるのです。
すべての食器を片付け終えた父と私が、ホワイトソファに座ります。
すると、ソファの真ん中に座っている母が、両脇の父と私に、ゆったりと紅茶を入れてくれるのでした。